アラウーノの有機ガラス系新素材を評価してみた

トイレ(便器)といえば陶器製。これはトイレメーカーなどの業界の常識であり、わたしたちのようなユーザーにとっても、陶器製の便器は一般的で、とても馴染みのあるものだと思います。

その中で、陶器以外の素材でトイレをつくることにチャレンジしたのが、総合電機メーカーとしてもおなじみのパナソニックです。同社の主力トイレ「アラウーノ」は、有機ガラス系新素材という特殊な樹脂で作られています。

樹脂というと、プラスチックをイメージされる方が多いかと思います。有機ガラス系新素材とは何なのか?陶器と何が違うのか?本当にトイレに適した素材なのか?など、ユーザー目線で有機ガラス系新素材を評価してみました。

業界唯一!有機ガラス系新素材を採用したパナソニックのアラウーノ

パナソニックのタンクレストイレ「アラウーノ」は、トイレ業界で唯一、有機ガラス系新素材を採用しています。

有機ガラス系新素材は、アクリル素材をベースとした特殊な樹脂です。樹脂といえばプラスチックのイメージがありますが、システムキッチンや洗面化粧台、ユニットバスに使われている人工大理石も樹脂製です。割れにくく耐久性がありますので、住宅設備の素材として広く使われています。

有機ガラス系新素材は、水族館の水槽や航空機の窓など、高い耐久性や堅牢性が求められる箇所でも採用されています。

既に10年以上経過しているが、有機ガラス系新素材のトイレは意外と知られていない?

それでも、便器といえば陶器製、というのが、今でも一般的なイメージかと思います。

パナソニックが、有機ガラス系新素材を採用したトイレ「アラウーノ」を発売したのが2006年。発売から既に10年近く経っていますが、今でも「樹脂のトイレで本当に大丈夫か?」と相談される方や、ネット上でも不安を感じている方の声が比較的多いことから、まだ一般的に広くは浸透していないかな、というのが個人的な印象です。

私自身、リフォーム業界に転身するまでは、パナソニックがトイレを作っていることすら知りませんでしたし、最初の頃は「樹脂製」という点がどうしても引っかかって、メーカーからの説明を受けても半信半疑でした。

実機を見て、他社の同等機種との比較実験(ただし、自社に有利な実験をするのが一般的なので、あまり信用していませんが)を見て、試しに使用してみて・・・と体験を繰り返す内に、むしろ陶器よりもメリットが多いのではないか?と感じるようになりました。

ただ、特にお手入れ・掃除など、注意すべき点もありますので、一長一短・賛否両論な素材だと思います。

アラウーノの有機ガラス系新素材の防汚性・抗菌性

有機ガラス系新素材は、水族館の大型水槽や飛行機の窓などにも使われているアクリル樹脂をベースとした特殊な樹脂です。撥水性が高い素材で、汚れを含んだ水滴ごとはじくため、水アカが便器表面に固着しにくく、取れやすいと言われています。パナソニックが実施した水アカ付着試験でも、陶器と比べて有機ガラス系新素材の方が水アカに強い結果が出ています。

機種 約1ヶ月使用相当 約3ヶ月使用相当 ブラシ掃除後
CH466
(サッとれる加工付)
平均55.8μm 平均76.4μm 平均73.6μm
有機ガラス系新素材
(新型アラウーノ)
(アラウーノSⅡ)
(アラウーノV)
平均9.3μm 平均16.9μm 測定不能

※水アカ付着試験(鹿児島市)による水アカ堆積高さをレーザー顕微鏡にて計測(パナソニック調べ))

一点気になるのは、有機ガラス系新素材の抗菌・除菌についての情報がないことです。

トイレの汚れの原因は、水アカだけでなく、菌や尿、ホコリなど様々あります。アラウーノリーズ(新型アラウーノ、アラウーノSⅡ)は台所用中性洗剤で便器を洗浄しますので、この洗剤に、除菌効果のある洗剤を使うと効果があるのかもしれません。ただ、パナソニックがデータを出していないため、有機ガラス系新素材の抗菌性についてはよく分かりません。

また、便器ボウル表面がツルツルで、平面が平滑だと、細かい汚れが残りにくいのですが、有機ガラス系新素材は、平滑性についてのデータも公開されていません。ちなみに、TOTOの陶器(セフィオンテクト)は100万分の1mm単位、LIXIL(INAX)の陶器(ハイパーキラミック)は1000分の1mm単位で表面が平滑とのことです。

アラウーノの有機ガラス系新素材のメリット

トイレの形を自由に設計できるため、スキマが少ない

陶器製の便器は、トンネル窯で高温で焼き上げる過程で若干収縮するため、完璧に同じサイズの便器を作ることが困難だと言われています。一方で、有機ガラス系新素材の場合、陶器と比べて自由に設計・生産できます。便器と便座の間のスキマを無くしたり、便器洗浄用の洗剤の注入口を付けるなど、ユニークな機能を実装できているのは、有機ガラス系新素材のメリットの一つです。

かなり軽い

有機ガラス系新素材は、陶器と比べると、重量が約半分と軽いのも特徴です。「軽いと何がいいの?」と言われると、ユーザー側にはそこまでのメリットは正直思い浮かびません。ただ、トイレリフォームの工事を行う職人からすると、陶器製便器は重くて運びにくいので、軽い有機ガラス系新素材は喜ばれると思います。もしかしたら、より丁寧に工事をしてくれるかもしれません。

廃棄物が少なく、環境にやさしい

経済産業省の調査では、衛生陶器は、コンクリートやガラスに比べて非常に硬く、粉砕が困難で、衛生面から再資源化も困難なため、最終処分場で埋め立てられているとのことです。そして、パナソニックによると、有機ガラス系新素材のトイレであれば、埋め立て処理量も、従来品の陶器(約30kg)の10分の1以下の約2kgで済むとのことです。さらに、陶器と異なり、サーマルリサイクル(熱回収)が可能なため、廃棄物を焼却する際の排熱(熱エネルギー)を回収して利用できます。設置してから、10年、20年先の話とはなりますが、廃棄時に、陶器よりも環境にやさしい素材であると言えます。

冬に、ひんやりしない

実際にアラウーノVを自宅で使用しているユーザーの中で、「冬に、足が便器にあたってもひんやりしない」という声もありました。これをメリットと感じるかどうかは、人それぞれだと思います。

アラウーノの有機ガラス系新素材のデメリット

陶器と比べると、素材の質感が・・・

やはり、陶器と比べてしまうと、手触りや、叩いた時の音、見た目の質感などは、若干劣るかな、という印象です。ここは個人差がかなりある所で、「陶器と遜色ない」という方もいれば、「やはりプラスチックっぽい」という方もいます。事前に、パナソニックのショールームなどで、実機を目で見て、触ってみることを強くオススメします。

掃除用洗剤とブラシには要注意!

パナソニックのアラウーノのカタログには、有機ガラス系新素材は、「細かい傷もつきにくく、ブラシ掃除も可能」とアピールされているのですが、これには注意が必要です。カタログのQ&Aページや取扱説明書にはしっかりと書かれていますので、以下の表にまとめました。

パナソニックが推奨しているもの

  • 中性のトイレ用洗剤
  • PP(ポリプロピレン)製ブラシ

パナソニックが使用を禁止しているもの

  • 酸性の洗剤、アルカリ性の洗剤、アルコール(エタノール、イソプロピルアルコールを含む洗剤)、消臭剤、滴下タイプの消臭剤、トイレ掃除用ペーパー(花王製トイレクイックルを除く)、オレンジオイルを含む洗剤、柑橘系の香りのする洗剤、重曹・シンナー・ベンジン・アルコール・その他薬品
  • 研磨剤入りブラシ、ナイロンブラシ

パナソニックによると、研磨剤入りの洗剤・ブラシや、ナイロンブラシを使うと表面の傷の原因となり、酸性やアルカリ性、その他パナソニックが禁止している洗剤を使うと故障や割れ・破損や、場合によっては製品内部が露出し、感電する原因にもなるとのことです。

汚れが落ちやすくて人気の洗剤を買って使ってみたが、後から酸性の洗剤だとわかった・・・ということの無いように、アラウーノのユーザーは、ブラシや洗剤についても、しっかりと商品のラベルを見てから購入して使ってください。

せっかくの有機ガラス系新素材も、傷がついてしまうと防汚効果が台無しになります。また、汚れが付かないという訳ではないので、全自動洗浄タイプのアラウーノであっても、中性洗剤とPP製ブラシで定期的に掃除をして、頑固な汚れを残さないようにするのが、トイレをきれいに保つポイントです。

万が一傷が付いた場合、細かな傷であれば歯磨き粉やアクリル用コンパウンド(研磨剤)で補修が可能とのことですが、研磨剤での磨きでは、目に見えないレベルの傷までの補修は難しいような気がします。

不燃材ではない

パナソニックのアラウーノのカタログには、有機ガラス系新素材を採用しているアラウーノシリーズは不燃材ではないため、集合住宅や防火地域の戸建住宅などに設置する場合、給排水管が防火区画を貫通する際には、消防法関連法令および条例などに従って施工するように、との記載があります。パナソニックのショールームでも、同じ説明を受けたことがあります。集合住宅や、防火地域の戸建住宅にお住まいで、アラウーノの設置を検討されている方は、事前にリフォーム会社・工務店に相談されると宜しいかと思います。

まとめ

パナソニックのタンクレストイレ「アラウーノシリーズ」に採用されている有機ガラス系新素材は、陶器と違って自由に設計ができるため、スキマが少なく、お手入れがしやすいメリットがあります。一方で、やはり陶器ではないため、素材の質感が若干劣り、使うブラシや洗剤によっては表面に傷がつく可能性があるため、注意が必要です。

パナソニックより、有機ガラス系新素材のトイレが発売されてから10年以上経過していますが、一般的にはまだ、陶器製トイレの方がメジャーです。特に一度も有機ガラス系新素材のトイレを使ったことの無い方は、パナソニックのショールームで実機をご覧になられることをおすすめいたします。

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